同行者、TAKADA(仮称)と行く、「ただいま恋愛中」

干される、という言葉がAKBシアターには存在している。抽選により決められるシアター内への入場順が後ろのほうになる現象のことを差しているのだが、これまで私は一般枠でチケットを取った公演ほぼすべて「干されて」いた。今日も今日で隣の列が一順で入れたのに、隣の列が一順で呼ばれたからこそ、私は瞬間的に「干される」ことを覚悟し、しかしながらそれならそれで一体どのくらい早く入れるのだろうかと一抹の希望にかけていた。同行者は昨日のK公演でシアターデビューを飾った女の子(以下、TAKADA/仮称)だった。以前から私の熱烈なるAKBシアター行こうぜラヴコールを断り続けていた彼女だったが、「めーたんに犬として飼われたい」という誰しもが一度は抱いてしまっても不思議はない本能的な渇望を誤魔化すことができず、意を決して私に連絡してきたのだった。「私を、連れていってください」と。
そうして彼女はシアターデビューした。めーたんに飼われたいと事あるごとに口走るようになった彼女のために、どうしてもセンターブロックで見せてあげたくて、女性シート枠でメール応募したのだが、これが見事当選!これで「おしべとめしべと夜の蝶々」「リターンマッチ」などの名だたる問題曲をじっくりと見せてあげられるのだと私は嬉しさのあまりにあまり眠れなかった。が、今はその話をしている場合じゃなかったのでA公演の話に戻ります。
人によってその基準はまちまちなので一概には言えないのだが、私はなるべく干されたくないと神様に祈った。そんな私を尻目にTAKADAは見られればどこでもいい、という顔をして天井から吊り下げられたモニタを一生懸命見ていたのだった。10順あたりまでは選ばれろという人々の無言の期待に膨らんだ熱気がカフェを支配し、それを超える頃には、おいおいどうして早く呼んでくれねぇんだよという怒りを孕んだ熱気にそれがとってかわる。20順近くになる頃には一気にその熱気が醒めて、作戦(どこの席をとって爆レスを狙うか)変更を余儀なくされた人々はせわしなく足踏みをしたり、落ち着き見失う。20順を超えると、これはもうむしろ最後のほうがネタ的においしいのではないか、というポジティブシンキング・セルフフォローを発動させだすのだが、私たちはまさにここにいた。250人収容であるので呼ばれる順は25順(厳密に言うと違うが、細かい話は省く)まで存在しており、残り3組という場面でようやっと私たちはシアター内にはいることを許されたのだった。TAKADAはシアターについては初心者であるから、私に任せる、というスタンスを貫いていたので、それをいいことに私は「下手」で見ることを強く推奨したのだった。
あっちゃんはセンター下手が多いよ。ヒダリホサレメンは面白いよ。
ねぇ、でさ、何より、りなてぃんが超くるの!りなてぃんが!りなてぃんってすごいんだよ、ねぇ、りなてぃんだよ!りなてぃんマジすごいんだって、超みてくんの!まじ超みてくる!

私がかなり強引にシアターに連れて行くので、同行者は基本的に全てのメンバーを把握していないことが多い。そしてあえて乱暴に括るが、そんな人々は、りなてぃんの顔はわかるまでもその魅力であったりどういう人なのであるのか理解しておらず、あー顔はわかるけどそんな好みじゃない、であるとか、あーまぁ嫌いじゃないけど、というような私の激烈プッシュがまさにのれんに腕押し状態になる。今回もご多分に漏れず、りなてぃん激プッシュする私にTAKADAはずっと半笑いを投げかけていたのだった。

干されに干されまくった私たちであったが、扉を入ってすぐ左に存在している下手側お立ち台の横にあるスペースの白線ほぼ直前の位置をキープすることに成功。それもこれも最初から下手を狙っていった賜物であると私は自負しているが、いやだがしかし、柱がどんなに邪魔であってもセンター見えなくても、正面に、「目を合わせたらダメだ」と本能が危険の最終ベルを鳴らすようなメンバーが来たとしても、それを全部チャラにして、公演後に「結果的にこの席でよかったのかもしれない」と思わせてしまうAKBって本当にすごいと思う。つまり、この席であったがために私たちはあるメンバーからピンポイント爆撃を食らいハートまで金縛りにされてしまったのだった。